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2009年3月1日日曜日

経済・財政の軸足を変える -内需大国日本への脱皮-


次の時代へ舵を切る意思を欠く現政権

 2009年度予算案が衆院を通過し年度内成立が確定した。予算規模は総額88.5兆円、緊急対応費一兆円などを含み、当初予算ベースでは過去最大となった。引き続いて政府与党は一時給付金を含む08年度2次補正を採決、さらに09年度補正として追加経済対策を提示する構えである。確かに緊急対策は必要だがこの一連の流れは事態の深刻さに対する見通しの甘さを自白するのと等しい。

 わが国の経済危機、当初、アメリカ発の金融危機の影響は少ないはずがGDPの落ち込みは先進国で最も大きく、今もさらに低落が続いている。長期的な展望に立ち、それに即して緊急対策を一刻も早く講じるべき時だが、これまでさしたる対策を打ち出せないまま時間を空費した結果、事態はますます深刻さを増している。この時期になぜか 11年度の消費税増税をちらつかせる現政権下で先行き不安から消費は落ち込み、景気がよくなる期待感は薄い。特に問題なのはこの大きな時代の曲がり角に直面して、現政権には次の時代へ向け思い切って舵を切る明確な意思が感じられないことだ。


内需大国への道  

 今回のこの経済危機、わが国ではハイテク製品や自動車など外需頼りの経済構造が災いしていると言われている。しかし本当にそうだろうか。日本の GDPに占める輸出の割合(輸出対GDP比率)は16%程度、しかも10 年前までは8%以下、アメリカに次いで低い。ドイツや中国、韓国は40%を超える。

 日本は過去も現在も輸出大国というよりは内需大国。今日の経済危機を乗り越えていくにはこの特質を活かす方向へ経済・財政運営の軸足を移していくべきである。

 すなわち、まず注目すべきは個人消費。日本の個人消費は GDPの56%を占めている。小泉政権以来、この部分を犠牲にしてこれまで景気を維持しようとしてきた。これを改め、今後ここを膨らますことが第一である。社会保障を充実し、所得の拡大を図って、家計と地域経済を活性化する。このことは人材確保の面で将来への先行投資でもある。

 第二に、外国への輸出で稼いでいる大企業にばかり頼るのではなく、国内を主な経済活動の場とし、市場としている中小企業のてこ入れを図る。

 第三に、今後、国際価格が上昇する食糧、エネルギー、素材などの自給率の向上、安定確保に力を注ぎ、これらの分野の経済を国内に呼び戻す。自然エネルギーや新素材に加えて、農業の活性化による食糧供給と雇用の確保を促す。

 財政の側面からこうした流れを促す社会保障、教育、第一次産業と中小企業等に焦点を当て、特に財政面における積極的な政策転換を進める。これは同時にその主たる舞台である地域振興を促進することでもある。


円高にこだわらぬ経済運営の発想転換

 思い切った経済運営の発想転換が今、求められている。

 特に大事なのはこれまでの円安誘導を転換することである。円安になれば輸出型の大企業はいいが内需中心の中小企業は収益力が落ちる。また個人の購買力は国際市場において縮小する。当然、内需の成長率は低下する。

 内需を成長させるには円高にすればよい。円高で個人の購買力は強くなり、個人消費が拡大すれば国内の景気はよくなる。その影響力は小さいというが実は純輸出が GDPに占める割合は2%未満、すなわちGDP の98%以上が実は内需である。輸出型企業でさえ原材料の調達価格は下がるからすべてがマイナスというわけでもないはずである。

 トヨタやソニーなど輸出産業がこれまで日本経済の牽引車の役割を果たしてきた。これからも欠くべからざる役者であることに変わりないが、いつまでも彼らにばかり主役を頼るには無理がある。海外のマーケットが無際限に拡大成長するはずもなく、借金だらけのバーチャルなアメリカ市場依存はもう終わり。地味ではあるけれど確かで安定した国内マーケットを一方で確立すべき時だ。しかもそれはそのまま明日の国民生活に寄与ことに直結する。


 経済先進国を自負するのならそれが進むべき道筋、旧来の発想を超えられず、いつまでも既得権にしがみつく現政権に、一刻も早く退場してもらうしかない。